6-15-1 受け取った感動を、次の世代へ

人は、知識や技術を教えられるだけで成長するのではありません。誰かの言葉に励まされたり、生き方に心を動かされたり、自分もこのようになりたいと憧れたりすることで、新しい一歩を踏み出します。私たちが次の世代へ渡していくべきものは、方法や正解だけではなく、自分がこれまでに受け取ってきた「感動」なのだと思います。

なぜ、今の自分があるのか。

その答えを探すためには、自分の原点を振り返る必要があります。原点は人によって異なります。家族からかけられた言葉、先生から受けた励まし、仲間と一緒に乗り越えた経験、仕事で出会った先輩の姿勢、一冊の本との出会いなど、人生を動かすきっかけは日常のさまざまな場所にあります。

私にとって大きな原点となったのは、スポーツとの出会い、そして多くの人との出会いでした。目標に向かって努力すること、仲間と力を合わせること、思うような結果が出なくても挑戦を続けること。その過程で味わった喜びや悔しさが、現在の私の価値観をつくっています。

また、身近には、明確なゴールを掲げ、それを実現するために一つずつ行動する人たちがいました。世界に目を向けて挑戦する恩師や、自分の好きなことを追求し続ける人の姿を見て、「自分も挑戦してみたい」と心を動かされました。

振り返れば、今の自分は、誰かから受け取った感動の延長線上にあります。だからこそ、今度は自分が、それを次の世代へ手渡す役割を担っているのだと思います。

ただし、次の世代へつなぐということは、自分と同じ道を歩ませることではありません。自分の経験や価値観を正解として押しつけることでもありません。受け取った感動を自分なりに行動へ変え、その姿を通して、新しい挑戦のきっかけを渡していくことです。

そのために、まず大切にしたいのは、一人ひとりが自分の強みを理解することです。尊敬する人を真似ることは、学びの入り口になります。しかし、誰かと同じ人になる必要はありません。自分はどのような場面で力を発揮できるのか。周囲にどのような価値を届けられるのか。対話や内省を通じて自分の軸を見つけることが、その人らしい成長につながります。

次に必要なのは、安心して力を発揮できる環境です。新しい考えを否定せずに耳を傾け、挑戦しようとする気持ちを支える。経験のある人が先に答えを与えるのではなく、本人が考え、選択する時間を大切にする。必要なときに支え、時には静かに見守る。そうした関わりが、人の可能性を引き出します。

そして、実際に挑戦できる場を用意することも欠かせません。人は、自分で考え、決断し、その結果を引き受ける経験を通して成長します。成功だけでなく、失敗も大切な学びです。失敗を責めるのではなく、そこから何を学び、次にどう生かすかを一緒に考えることで、新たな挑戦が生まれます。

このような成長の循環は、学校や職場、家庭、地域など、あらゆる場所で生まれます。かつて支えてもらった人が、今度は誰かを支える。挑戦する姿に勇気をもらった人が、やがて別の誰かの背中を押す。年齢や立場にかかわらず、人は支えられる側と支える側を行き来しながら生きています。

人を前へ動かす根底には、「好き」という感情もあります。好きだから続けられる。好きだから困難なときにも踏ん張れる。好きだから、その魅力や喜びを誰かに伝えたくなる。ただし、好きなことは、いつも楽なことではありません。悩みや苦しさを抱えながらも進んだ経験が、いつか誰かを支える力へと変わっていきます。

原点を振り返ることは、過去に戻ることではありません。自分が誰から何を受け取り、それをこれから誰に、どのような形で手渡していくのかを考えることです。

感動は、受け取って終わるものではありません。自分の中で育て、行動に変え、次の世代へ届けていくものです。誰かから受け取った情熱が自分の挑戦となり、その挑戦する姿が、また新しい誰かの心を動かす。その静かな連鎖が、人と組織、そして社会の未来をつくっていくのだと思います。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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