3-4-3 承認を求める心理

人は誰もが、心のどこかに「自分を見てほしい」「自分の存在や努力を認めてほしい」という思いを持っています。これは決して弱さではありません。自分が大切な存在として受け入れられていると感じることは、安心して挑戦し、自分らしく成長していくための土台になります。
コーチングにおける「承認」とは、単に成果を褒めることではありません。「結果を出したから認める」という評価ではなく、相手の存在、努力、変化、勇気、そして挑戦の過程を受け止めることです。
「その頑張りを見ていたよ」
「挑戦していることが素晴らしい」
「あなたがいてくれて助かっている」
こうした言葉は、相手に「自分はここにいていい」「自分のことを見てくれている人がいる」という安心感を与えます。その安心感が、自信を育み、次の一歩を踏み出す力になります。
スポーツの現場では、日々の練習や試合に多くの失敗が伴います。しかし、ミスは挑戦した証でもあります。結果だけを評価され続けると、選手は失敗を恐れ、正解を待つようになります。一方で、挑戦する姿勢や自分で考えた過程を認められると、選手は安心して試行錯誤できるようになります。
そこで芽生えるのが「主体性」です。
主体性は、周囲から命令されたから生まれるものではありません。本人の内側から「やってみたい」「変わりたい」「もっと成長したい」という思いが湧き上がったときに、初めて動き始めます。そのタイミングは一人ひとり異なり、外から強制することはできません。
コーチや指導者にできるのは、その瞬間を急がせることではなく、相手の可能性を信頼し、関わり続けることです。そのための方法には、知識や技術を教える、質問によって気づきを促す、自分で選択する機会を与える、努力や変化を認める、成長につながる役割を任せる、心に寄り添う、必要な経験を用意する、あえて見守るなど、さまざまなものがあります。
メンタリングにおいても、この姿勢は重要です。メンターの役割は、すぐに答えを教えたり、相手を自分の望む方向へ導いたりすることではありません。対話を通して相手の経験や感情を丁寧に受け止め、本人が自分の強みや可能性に気づき、自ら答えを見つけていく過程を支えることです。
その際に求められるのは、結果への「期待」よりも、人への「信頼」です。期待には、「こうなってほしい」という支援する側の願いが含まれます。それが強すぎると、相手は期待に応えることを優先し、自分の本当の気持ちを見失うことがあります。信頼とは、すぐに結果が出なくても、その人には自分で考え、選び、成長する力があると信じることです。
ただし、「委ねること」と「放任すること」は違います。「自分で考えて」と伝えた後、うまくいかなかった責任を本人だけに負わせるのは、コーチングでもメンタリングでもありません。相手の主体性を尊重するからこそ、支援する側も主体的に関わる必要があります。
相手が迷っているときには問いかけ、考える準備が整っていないときには必要な情報を伝え、苦しいときには寄り添う。そして、自分の関わり方が本当に相手の成長につながっているかを振り返り続ける。その責任を引き受けることが、支援する側の主体性です。
承認とは、相手を思い通りに変えるための技術ではありません。その人の「今」を受け止め、可能性を信じる姿勢です。人は、自分を見てくれる人、信じてくれる人がいると感じたとき、安心して自分自身と向き合えるようになります。
承認によって安心が生まれ、信頼によって挑戦する勇気が育ち、対話によって主体性が芽生える。その人自身のタイミングを尊重しながら、信じ、問いかけ、寄り添い、関わり続けること。それこそが、コーチングとメンタリングに共通する、人の成長を支える本質なのです。
SPORTS BAR FEEL FREEオーナー
宮﨑 善幸
