6-14-4 信じて待つ関わり

「スポーツで人の性格は変えられるか?」
「数学で人の性格は変えられるか?」

授業でこの問いを投げかけると、多くの学生は「スポーツなら変えられる」と答えます。一方で、数学に対しては否定的な反応がほとんどです。しかし私は、どちらに対しても同じ答えを持っています。――人の性格そのものは変えられない、ということです。

では、スポーツや学びの価値とは何でしょうか。私は「性格を変えること」ではなく、「自分の性格をどう扱うかを学ぶこと」にあると考えています。内向的な人が急に外向的になるわけではありません。しかし、試合の中で仲間に声をかけ、ボールを要求し、自分を表現する必要に迫られる。その経験を通して、人は自分の性格と向き合い、それをコントロールする力を身につけていきます。

同じことは数学にも言えます。神奈川県で長年教鞭をとられた 井本陽久 先生の授業は象徴的です。先生は「できる・できない」で生徒を判断するのではなく、その存在を認め、信じ、寄り添います。答えを急がせず、「考える時間」を大切にし、生徒が自ら気づくまで待つ。その姿勢は、まさに現場で選手を見守るメンターそのものです。

「そのままでいいんだよ」
この言葉は、成長を止めるものではありません。むしろ、自分の現在地を受け入れることで、初めて前に進む力が生まれるというメッセージです。ありのままを認めた上で挑戦する――そこに本質的な成長があります。

私自身、これまで多くの人の成長に関わる中で、最も大切だと感じているのは「信じて待つ姿勢」です。人はすぐには変わりません。だからこそ、目の前の結果に一喜一憂するのではなく、その人の歩みを長い目で見守ることが必要です。

ここで重要になるのが、「期待しないで信頼する」という考え方です。期待は時にプレッシャーとなり、相手の可能性を狭めてしまいます。「こうあるべきだ」という思いは、無意識の圧力として伝わるからです。一方で、信頼は違います。信じて任せることで、人は自分の力で考え、行動しようとします。その積み重ねが、主体的な成長を生み出していきます。

また、関わる側にとって大切なのは「未来を描く力」です。目の前の課題にとらわれすぎると、どうしても焦りが生まれます。しかし、その人が将来どのように成長していくのか、その姿を思い描くことができれば、今の遅れや迷いも意味のあるプロセスとして受け止められるようになります。

成長の価値は、結果だけにあるのではありません。試行錯誤する姿、小さな前進、失敗から学ぶ過程――そのすべてが成長です。それを共に感じられることこそが、関わる側の喜びであり、やりがいではないでしょうか。

「見守る」とは、何もしないことではありません。忍耐と信頼をもって関わり続けることです。そして、その関わりの中で人は、自分自身を理解し、自分を信じて生きる力を育んでいきます。

信じて、待つ。
そのシンプルで奥深い関わりこそが、人の成長を支える本質なのだと、私は感じています。

SPORTS BAR FEEL FREEオーナー

宮﨑 善幸

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